SEOを自社で内製化するか、専門会社へ外注するかは、予算や人員、成果までのスピードで最適解が変わります。

特に初心者の方は、やるべきことの範囲や費用感が見えづらく判断が難しいものです。

この記事では内製化と外注の違い、メリット・デメリット、費用相場、体制づくりのコツを、これからSEOを始める方にも分かりやすく整理します。

SEO対策の内製化と外注の基本

SEO内製化とは?できることと範囲

内製化の定義と射程

SEO内製化とは、キーワード戦略の立案からコンテンツ制作、技術的改善、効果測定までを社内リソースで回す体制を指します。

部分内製化もあり、例えば「戦略は社内、制作は外部」「制作は社内、監修だけ外部」といった切り分けも可能です。

現場でできる主な業務

社内で取り組める範囲は広く、以下のような工程を想定します。

初心者であっても、段階的に着手することで実行可能です。

最初は基礎の定点観測と既存ページの改善から始めると無理がありません。

  • 現状分析(GA4やSearch Consoleの導入、基礎レポート)
  • キーワード調査と検索意図の整理
  • 情報設計と記事構成案の作成
  • コンテンツ制作と校正、E-E-A-T観点の加筆
  • 内部リンク最適化、メタ情報や構造化データ設定
  • 既存記事のリライトと統合
  • テクニカルSEOの基本対応(サイト速度、インデックス最適化など)

内製化では、ビジネス理解と現場知見を直接コンテンツへ反映できる点が大きな強みです。

向いている組織規模と前提

  • 小規模〜中規模の事業で、継続的にコンテンツを発信できる環境
  • 自社にドメイン知識があり、担当者が学びながら回せる文化
  • 成果の立ち上がりに3ヶ月〜1年程度の猶予がある事業

必要スキルとツールの目安

検索意図を読み解く編集力、基本的なHTML理解、データを見る力があると前進が速くなります。

ツールは、まずは無料のSearch ConsoleとGA4からで十分です。

必要に応じてキーワードや被リンク調査ツールを補完します。

SEO外注とは?任せられる業務

外注の定義と対象範囲

SEO外注は、専門会社やフリーランスに戦略・実装・運用の一部または全部を委託することです。

工数が重い領域や専門性の高い領域を任せることで、スピードと品質を両立しやすくなります。

任せられる主な業務と成果物

  • 戦略立案とキーワードマップ、情報設計
  • テクニカル監査(Core Web Vitals、クロール/インデックス最適化)
  • コンテンツテーマ設計、構成案、執筆、監修
  • デジタルPRやナチュラルリンク獲得支援
  • 競合調査、レポートダッシュボード構築
  • 移転や大規模改修時のSEO監修外注では「再現性の高い型」と「専門的な監修」を短期間で獲得できる点が魅力です。

比較の前に決めること

目的と制約を先に定義する

内製か外注かを決める前に、目的・KPI・予算・人員・期限・許容リスクを言語化します。

検索エンジンの基本(クロール→インデックス→ランキング)理解も最低限押さえます。

これが曖昧だと、内製も外注も迷走します。

以下のチェック項目を会議で合意してから手段を選ぶと、失敗が激減します。

  • 何を増やすのか(流入、CV、売上、見込み客、指名検索)
  • いつまでに何を達成したいのか(期日とKPI)
  • 月あたりの投入工数(担当者の可処分時間、開発工数)
  • 月間予算の上限と最小継続期間
  • リスクの許容度(順位変動、YMYL領域の審査負荷など)

意思決定整理のための早見表

決めること推奨の基準メモ
目的売上 or MQLなど事業KPIに直結目的が曖昧なら外注前に要再設計
期限中期(3〜12ヶ月)広告より立ち上がりが遅い
工数週5〜10時間/人を確保継続が鍵
予算月10万〜100万円規模により変動
リスクブラックハットはゼロ許容安易な近道は禁物

戦略とKPIの合意が曖昧なまま外注すると、成果物が目的に合致しないまま費用が消化されがちです。

どっちが正解?タイプ別の考え方

事業タイプ別の目安

  • スタートアップ(初期): 仮説検証を高速回転できる内製主導。必要に応じて月10万〜30万円でスポット相談を外部活用。
  • SMB(中小企業): 戦略と監修は外注、実装は内製のハイブリッドが費用対効果を取りやすい。
  • メディア/コンテンツ大量投下型: 編集長は内製、制作ラインは外注で拡張。品質管理のルール設計が肝。
  • EC/プロダクトサイト: テクニカルSEOは外注、商品説明やQ&Aは内製が現実的。
  • YMYL(医療/金融など): 監修体制と権威性の設計を外注しつつ、一次情報は内製。リスク管理が最優先。

メリット・デメリット比較

内製化のメリット

ビジネス理解が深く品質が上がる

現場の知見を即座にコンテンツへ反映でき、検索意図と顧客課題のズレが小さくなるため、CVに近い記事が作りやすくなります。

スピードと柔軟性

小さな改善を継続しやすく、検証→学習→改善のサイクルが短くなるので機会損失を減らせます。

中長期のコスト最適化

継続運用でノウハウが蓄積され、同じ費用でより大きな成果を出せる体質になる点が内製資産の魅力です。

内製化のデメリット

立ち上がりの難易度

初心者だと最初の設計を誤りがちで、遠回りによる機会損失が起きやすくなります。

採用と教育のコスト

人材確保には時間とコストがかかり、属人化リスクも伴います。

担当交代時の引き継ぎ設計が必須です。

情報アップデート負荷

アルゴリズムや検索体験の変化に追随するには、継続的な学習時間の投資が欠かせません。

外注のメリット

専門性と再現性

多業界の事例知見があり、勝ち筋の型を短期間で導入できます。

移転や大規模改修など一過性の山場にも強いです。

リソースの即時補充

人手が足りない時期でも、並行して施策を走らせられるため機会損失を抑制します。

可視化とガバナンス

第三者視点の監査やレポーティングが入り、意思決定の質と説明責任が高まります。

外注のデメリット

事業理解の壁

業務理解に時間がかかり、テンプレ施策の押し付けが起きると成果が出づらくなります。

コミュニケーションコスト

要件定義やレビューの往復が増え、内製側の工数も一定以上必要です。

リスクある手法の混入

過度な被リンク購入や自動生成量産など、長期的にサイト価値を毀損する手法が混ざる恐れがあります。

初心者が避けたいリスクと対処法

よくあるリスク

  • 「成果保証」「短期間で1位」などの過度な約束
  • 自動生成コンテンツの量産と重複量産
  • 不自然な被リンク獲得やPBNの利用
  • KPIが流入数のみで、CVや売上との接続がない

対処法

施策の根拠とリスク説明、実施プロセスの透明性、アカウントやデータの所有権を契約前に確認します。

YMYL領域では監修者の実在性と権威性の提示を必須化します。

SEO費用相場とコストの目安

内製化の費用

主なコスト項目

  • 人件費(SEO担当、編集、ライター、開発)
  • 教育/研修費(講座、書籍、外部ワークショップ)
  • ツール費(キーワード・被リンク調査、クロール、レポート)
  • 制作費(画像、イラスト、監修費)初年度は「人件費+必要最低限のツール」から始めるのが現実的です。

目安金額のレンジ

項目月額の目安備考
SEO担当1名35万〜60万円相当社員月額換算(年収420万〜720万円想定)
編集/ライター10万〜100万円内製なら人件費、外部併用も可
開発対応工数10万〜50万円テクニカル修正の規模で変動
ツール1万〜8万円AhrefsやSemrush(2万〜5万円)、クローラ等
研修/書籍0.5万〜3万円初年度に厚めに投資

月20万〜40万円の小規模投資でも、適切な優先順位なら十分に成果を狙えます

外注の費用相場

サービス別の相場感

サービス相場契約タイプ
月次コンサル/伴走20万〜150万円/月レギュラー
テクニカル監査30万〜150万円/回スポット
コンテンツ制作1万〜10万円/本量・専門性で変動
編集/監修0.5万〜5万円/本YMYLは高め
デジタルPR/リンク獲得20万〜300万円/案件成果にばらつき
移転/リニューアル監修50万〜300万円/回重要度高

高い費用は「範囲の広さ」「専門性」「スピード」のどれかに比例します。

見積もり時は必ず納品物と責任範囲を明確化しましょう。

料金形態の違い

主な形態と向き不向き

  • 月次レテナー: 継続改善に向く。学習サイクルを回しやすい
  • プロジェクト型: 監査や移転など限定タスクに最適。短期で成果物が明確
  • 時間単価制: スポット相談やレビュー向け。柔軟だが費用予測が難しい。
  • 成果報酬型: リスクシェアだが、無理な手法が紛れる恐れ。初心者には非推奨

予算別の進め方

はじめの一歩のガイド

  • 月〜10万円: 内製で基礎整備(Search Console/GA4、テクニカルの初期是正、既存記事の改善)。必要に応じてスポット相談。
  • 月10万〜30万円: ハイブリッド(戦略レビューは外部、制作や実装は内製)。
  • 月30万〜100万円: 伴走+制作外注で拡張。編集長は内製で品質担保。
  • 月100万円以上: 専任チーム+専門会社の二階建て。大規模サイトやYMYLで有効。

費用対効果の考え方

ざっくりROI計算の型

  • 流入増加見込み(セッション) × コンバージョン率 × 1CVあたりの価値 = 売上増加
  • 売上増加 − コスト(人件費+外注+ツール) = 粗利増SEOは立ち上がりまで3〜12ヶ月かかるため、回収期間を含めて評価することが大切です。指名検索増やブランド資産など、定量化しづらい効果も考慮します。

SEO体制づくりのコツと選び方

内製チームの基本体制

役割分担の基本

  • SEOリード: 戦略と優先順位の設計、全体管理
  • 編集/コンテンツ: 企画、構成、品質管理
  • ライター/専門家: 記事執筆と一次情報の提供
  • テクニカル/開発: 速度、構造、実装管理
  • アナリスト: 計測設計、レポーティング、洞察最小構成でも「戦略を握る人」と「手を動かす人」を分けると、品質とスピードの両立がしやすくなります。

規模別の目安

  • 小規模: 兼務中心(1〜2名)。外部のスポット支援で補完。
  • 中規模: 編集とSEOリードを分離。開発は予約枠を確保。
  • 大規模: 専任チームを設け、外部は専門領域に集中投入。

最低限やることリスト

運用の頻度設計とコアタスク

頻度最低限やること目的
週次Search Consoleと順位の変化確認、簡易リライト検索意図とのズレ補正
月次新規記事の投入、内部リンク見直し、インデックス確認供給と最適化の両輪
四半期テクニカル監査、カテゴリ構造の点検、CV分析施策の再設計

「少しでも毎週進める」ことが、初心者にとって最大の成功要因です。

外注先の選び方

見極めポイント

  • 実績の再現性と類似業界の経験
  • 施策の根拠とリスク説明の透明性
  • 品質管理プロセス(編集、校正、監修の有無)
  • レポートの指標設計と意思決定への接続
  • 契約条件(期間、中途解約、権利、提出物の範囲)

被リンク販売、PBN、短期の順位保証、自動生成コンテンツの量産を提案されたら、即座に再検討を推奨します。

事前に聞くべき質問例

  • 3ヶ月目までに実行する施策と期待値は何か
  • 失敗事例とそこからの学びは何か
  • レポートが意思決定にどう役立つ設計か
  • 退出時の引き継ぎと資産(ドキュメント/データ)の扱いは

ハイブリッド運用

組み合わせの定石

  • 戦略・監修は外部、実装と運用は内製
  • 構成案は外部、執筆と一次情報は内製
  • テクニカル監査は外部、改修実装は内製「意思決定は内製、専門性は外部」という役割分担が最も安定します。

成功させるコツ

  • ガイドライン(トーン、E-E-A-T、内部リンク規則)を文書化
  • 箇条書きの要件ではなく、検索意図と読者課題を共有
  • レビュー指標(必須、推奨、任意)の三段階で運用

判断フロー

意思決定の流れを言語化する

  • 期限が3ヶ月以内に成果必須なら → 外注比率を高める
  • 予算が月10万円未満なら → 内製で基礎整備+スポット相談
  • YMYL領域で監修が必要なら → 専門家監修を外注
  • 記事量が多く品質管理が困難なら → 編集機能を外部委託
  • 技術的課題がボトルネックなら → テクニカル監査を外注

「ボトルネックはどこか」を先に特定し、そこだけ外注するのがコスパ最適です。

目標とレポートの見方

リーディング指標とラギング指標

  • リーディング(先行): インデックス率、構造化データの適用率、内部リンク網の拡充、CVに近い記事の投入数
  • ラギング(遅行): 自然検索セッション、CV/売上、指名検索、キーワードの順位分布先行指標で「やるべきことが進んでいるか」を管理し、遅行指標で「成果」を評価します。

読み解きのコツ

季節性やキャンペーンの影響を除外して比較し、ページ単位ではなく「検索意図クラスタ」単位で評価すると意思決定が洗練されます。

契約時の注意点

最低限チェックする条項

  • 契約期間と中途解約条件(違約金、通知期限)
  • 成果物の定義と検収基準(再修正の範囲)
  • アカウント/データの所有権と引き継ぎ
  • 守秘義務と再委託の可否
  • レポート指標と頻度、打ち合わせ体制

SEOで「成果保証」「順位保証」は本質的に難しく、過度な保証は危険な手法を誘発しやすいことを理解しておきましょう。

透明性の高い説明と、再現可能なプロセスの提示が信頼の基準です。

まとめ

内製化は事業理解と学習資産を蓄える最良の手段であり、外注は専門性とスピードで機会損失を抑える強力な選択肢です。

正解は「どちらか」ではなく、目的・期限・人員・予算に応じた最適な組み合わせにあります。

初心者の方は、まずはSearch ConsoleとGA4で基礎整備を行い、既存ページの改善から着手してください。

その上で、ボトルネックだけをピンポイントで外注するハイブリッド運用が、費用対効果と学習の両立を実現します。

契約時は手法の透明性とデータの所有権を明確にし、短期の近道ではなくユーザーファーストな長期価値を積み上げる姿勢を貫くことが、結果として最短距離の成功につながります。